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  • ELI

新しい国が出来た人口わずか15人


子供の頃からの憧れ、それはアルミ輝くエアストリーム。

アメリカの広大な大地をシルバー輝くボディがピックアップバンに引っ張られ

湖畔の横にたたずむさまは、優雅な週末キャンプ生活の象徴。

よし、もう仲良しの皆で土地買ってトレーラーパークでカワイイモバイルハウスに住んじゃお!

争いの無い世界!差別の無い自由な生活!新しい国ができた!

Taylor Swift - You Need To Calm Down

大量のキャンピングカーが集まるハッピーなレインボービレッヂにはファンシーで今すぐにでも真似たい”映え”要素が満載のこのMV。

パステルカラーで現政権、トランプ&共和党への皮肉とスタンスをたっぷり込めたこの作品は彼女の政治的活動も合わせてすごく話題になったしワイドショーでは長年の喧嘩相手ともビデオ内で和解を演じたことも紹介されて事細かにディティールは解説されていると思う。

で、このレインボーファンタジーテイラー村には数々のトレーラーホームが。

彼女の政治的ポジションも含めて極めて先鋭した表現だなと思ったわけです。

というのも。。。まずこのトレーラーホームと白人といえば。。。

Eminem - Lose Yourself

ご存じ、エミネムの半自伝と言われるロストジェネレーション代表映画 ”8Mile"

この映画には白人貧困層がどんなに惨めかの象徴としてトレーラーホームが出る。

このMVも主題歌だし当然出てくるが、マイク1本で成り上がる他がないという「自分が進むべき道」も見える。実際良い映画だなって思ったし同世代の白人の10代何があったかを知ったきっかけとも言える。あの時代、自分はそうだったけど、彼らはこうだったんだ、と。

そんで、これを高め位置で思いっきり振りかぶったのが、これ。

Iggy Azalea - Work (Official Music Video)

これ、まさにイギーアザリアの成功談を絵にするとこうなるというMVだけど

この後、↑のエミネムとビーフ合戦が延々と続きHIPHOPの老害ジジイvs SNSギャルというカタチを成したのも事実。彼女はご存じの通りまずアメリカ人ではなくオーストラリア人。

「お金もなく 家族から離れ マイアミに降り立った16歳」「必死で働いた、くっそガンバッタ」 この「アタシはめっちゃ頑張った」と、それを言い切る肝っ玉と何かと攻撃されやすいキャラクターゆえに、アメリカ人の白人層からすると生意気が服着てるわけです。 しかも、白人貧困層をモチーフにするっていうのはすごくセンシティブなんだぞ(エミネムが腹をたててレイプすっぞこのアマ!ってラップするのも結構ホワイトトラッシュを露呈するが)というのもビーフ合戦の根源になっているとも言える。

なぜこのトレーラーホームと白人という組み合わせは神経質になるのか。

車輌型のキャンピングカー暮らしはすんごく歴史が古く、遡るとヨーロッパのジプシーによるショウマンズキャラバン(今で言うところのサーカス団)まで遡り、馬にひかせた大型の馬車が寝泊まりできる車輌が1900年初頭には産業革命中のイギリスを中心に改良され、アメリカで「旅行用」として登場したのが1920年代初頭。生活の荷馬車がレジャーのために改良され、紳士の(つまり貴族の)冒険&旅行&開拓に使われ広まり、今で言うところのトレーラーホーム型になったのは1940年代にはほぼ完成していたようです。 (ちなみにその荷馬車、聖書で既に5.5m(18フィート)と記されておりヨーロッパでは道路交通法で移動できるサイズはこの18フィートまでとされている) さて、この旅行用のトレーラーホームは手軽な別荘的要素ををもって一般家庭にまで浸透したのは1950年代、アルミボディの空力を考えられたエアストリームのような大型トレーラーホームは経済力への訴求もあり大流行し大量につくられ、まさに豪華さのピークだった。(自分も欲しいのはこの頃のモデル。正直アメリカのデザインとして絶頂期だ)けども、1970年代にはベトナム戦争を引きずる経済低下でオイルショック多発。小さな排気量の車やバイクでさえもヒッチできるサイズも販売されてそれはモービルハウスというジャンルをつくった。

60年代の民主党黄金期から後半にニクソンへとチェンジするとベトナム戦争終了後経済低下は止まること無く為替は変動相場にチェンジし、とうとうカーター時代で大型インフレが頻発。もう世界相手の商売ではどうしようもなくなったので国内へと金のコントロールをチェンジし、とうとう81年からのレーガンの住宅政策、公営住宅などへの助成を大幅にカットし、住宅事業を民間セクターに依存したため、一般的な住居を確保することが難しくなった低所得者が大量発生し、たどり着いた先がこのあぶれたトレーラーホームの中古を数十万で買い、そこで暮らすヒトが大量発生したわけだ。

つまり、白人経済の敗北の象徴なわけです。トレーラーホームって。

ブラックアメリカンや、チャイニーズコリアン系はこういう流れが少なくほとんどが地域のスラム化した部分によりそっていく横繋がりのコミュニティが強固だったりするけど、白人は他人とは社会性を発揮できても一族となると難しい。つまりドロップアウトしたら人生は死への道しかないほどのハードな環境しか選択できない。

母子家庭がホームレスから必死で這い上がってまずはこのトレーラーを手に入れるのがイギーアザリアの「必死で働いた、くっそガンバッタ」になるわけだ。(実際この曲3番目にお母さんに感謝している)

で、エミネムの8マイルの時は1995年。日本でもバブル崩壊後であり、現在にも続く大量のロストチルドレン世代はそれでも一戸建てを夢見てトレーラーホームで貯蓄をし一戸建てを手に入れるべく奮闘していたはずだ、レーガン、ブッシュと鬼のような国民締め付けで吐き出した失業率をクリントンが挽回したのだ。95年のアメリカは民主党へ転んだからである。 これが我らの世代(昭和35~45年)のベビーブーム世代の子供らに直撃するITバブルの爆誕だ。

だから、エミネムの8mileは子供の頃はホント苦労したけど(80年代)今からは

俺らの時代だ!あばよ!俺のスイートホーム、忘れないぜトレーラーホーム!というわけだ。

だけど容赦なく経済のムチは振り下ろされる。

誰もが家を持てたはずなのに、それをまた手放すことになる。

2008年、リーマンショック。クリントン政権からすっかり失業率が低くなり、低所得層でも戸建てが買えるように2000年ごろから低所得層にも家が買えるようにめっちゃ住宅建ちまくる、今のマンション投資の日本みたいに。で、そりゃそうだけどローンを転がしたらそうなるよね。

今日本でもリース物件つって住んでる家を担保にしてローン組んで返済能力なくなったら家を明け渡せば良いっていう超絶サブプライムローンの変形が流行ってるけど、ほんと同じ道。

日本の流行はアメリカの10年後だと言うのがこんなとこまで一緒なのもしょうがねーなってことで。

で、その世代の子供達は容赦なく家を失い、容赦なくまたトレーラーホームに逆戻り。 例外なく、イギーアゼリアはその世代なのだと言える。

さて、最初のテイラースイフトに戻ると彼女自身が起こした同性愛者の平等を促す訴えが、下院議会を通ったことを受け上院にも通そうという目論見のもとに作った曲。野心の塊である。

内容もエンターテイメントYoutuberの筆頭トドリック・ホール(星野源が紹介してた)を中心にLGBTQのセレブが出演目白押し。そんなカラフルビレッヂはみな同様に様々なサイズのトレイラーホームやモバイルホームに住んでて、それなのにリッチな雰囲気を漂わせてる。

これは元来のトレーラーホームが持ってる「どこにでも移動でき、周囲に縛られない」という表現を表したのだろうが、同時にこのなかで抗議行動に来る在りし日のホワイトトラッシュを思い起こさせる人達はプラカードの字をわざと間違え、みずぼらしい格好で無教養に見せるなど容赦がない。

ここで上記のエミネムや若い世代のイギーアゼリアとは大きく違うのは、彼女は確かにLGBTQのポップアイコンではあるかもしれないが、マドンナやレディガガのようなイタリア系移民というわけでもなく異端児扱いもされたことがない、正統派のカントリーミュージシャンであり本来は共和党支持者の多い地区で人気があるようなアイドルだったはず。

LGBTQの有力支援団体GLAADを歌詞に織り込むだけでなく、大金を寄付し、それにならって彼女のファンが13ドルを寄付する動きも広まっている。(そう、彼女は13という数字が大好きなのだ!)

もう、自分を取り囲む環境をこんまりメソッドよろしく「ときめかないからサヨウナラ」なのだ。

そうなってくると、彼女とクィアアイのメンバーやルポールのドラッグレースのクイーン達、大量に出てくるカメオのセレブ(ライアン・レイノルズはまるでノーマン・ロックウェルだ)

は、守られた彼女が、もう守られたくも無いし関わり合いたくもないし、有り体に今の状況にFUCKと言う勇気をささえるトレイラーハウスビレッジという新たな価値観の村人であり 経済環境には目もくれず、国力と内需を無理矢理捻って、また同じような幻想を”かわいそうな共和党保守支持者”に懲りもせず味あわせる残酷性を叩きつけているといえる。

実に先鋭化した意見をユニコーンにまたがった戦士として突きつけているのだ。

実際全米の人口3億2000万人のうち、トレーラーハウスに暮らすのは推定2000万人。 今現在この瞬間でもこのトランプ支持層が多い全米貧困州トップ10に入る州とトレーラーホームを多く抱える州は、サウスカロライナ州を除いて、ほぼかぶっている。 また、同じ事をくりかえすのかマザファッカー!と、いうわけだ。 なので彼女がキム・カーダシアンとは仲直りは絶対できないのもうなずける。 最後に素っ裸で挑むMVを1本ご紹介。

MACKLEMORE & RYAN LEWIS - CAN'T HOLD US FEAT. RAY DALTON (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

マックルモアほどアメリカを愛し、またアメ車を愛してる男もいないだろう。

マックルモアだけでアメ車の記事がびっしり書けるぐらい登場するし、それくらい彼にとっては重要な、自己表現のための存在なんだろうと思う。

この曲でもはやホーム、じゃない中味だけヒッチするシーンが登場する。

もうこれ以上失うモノはない、これ以下はないんだ、あがっていくだけだぞ!というメッセージがこれほどわかりやすく象徴的なのもないと思う。

リリックにも天井が耐えられんくらいに突き上げろ!っとうったえる。

天井のない、なにもないトレイラーハウスの中味はセカンドハンドショップ、いわばハードオフで揃えたようなモノばかりだ。

マックルモアは、いつも前向きでそんなクソみたいな俺らでもやれるだろう?と語りかける。

100歳のおばあちゃんとのバースデイパーティーを撮したMVは涙そそる出来映えだ。

虚無と戦うアーティストのパーティーハードなお祭り感は36歳という彼の肩にのしかかる絶対もう後戻りしたくはないという決意が見える。

そんなマックルモアのこの曲をCMに起用した車メーカーがある。

TOYOTAだ。嗚呼。


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